2009年のギャルゲー売り上げ&ちょっとした総括と展望

こんちは〜、ジャスト一年振りの更新です。見ている人、いますか?
ということで、毎年恒例のコンシューマギャルゲー年間売り上げランキングを。数字は、ファミ通の売り上げデータを基本に。ただ紙面にはTOP30までしか数字載ってませんので、細かい所は推測値になります。なお、アニメや漫画・ライトノベルなど原作が他にあるものは、ここではギャルゲに含めないということで集計しています(たとえばハルヒとからき☆すたとかね)。

順位 機種 タイトル メーカー 推定本数 発売日 初週本数
1 PSP アイドルマスターSP バンダイナムコ 187,039 2月19日 121,271
2 DS ラブプラス コナミ 175,895 9月3日 47,854
3 PS2 アマガミ エンターブレイン 73,415 3月19日 47,762
4 PSP ときめきメモリアル4 コナミ 68,870 12月3日 47,469
5 XBOX360 ドリームクラブ D3パブリッシャー 58,290 8月27日 44,884
6 PS2 メルティブラッド アクトレスアゲイン エコール 58,204 8月20日 42,489
7 XBOX360 シュタインズゲート 5pb 43,638 10月15日 16,434
8 PSP To Heart2 PORTABLE アクアプラス 43,361 7月30日 32,521
9 DS アイドルマスター ディアリースターズ バンダイナムコ 42,814 9月17日 33,395
10 PSP Fate/Unlimited Codes PORTABLE カプコン 37,779 6月18日 31,822
11 PSP おおかみかくし コナミ 35,970 8月20日 21,582
12 DS ひぐらしのなく頃に絆 第三巻・螺 アルケミスト 34,725 5月28日 26,391
13 PSP うたわれるもの PORTABLE アクアプラス 33,081 5月28日 23,157
14 XBOX360 CHAOS;HEAD NOAH 5pb 25,645 2月26日 17,952
15 PSP 智代アフター プロトタイプ 22,135 3月19日 15,495
16 PS3 ティアーズ・トゥ・ティアラ外伝 アヴァロンの謎 アクアプラス 20,586 9月17日 16,469
17 PS2 すっごい!アルカナハート2 AQインタラクティブ 18,317 4月9日 13,738
18 PS2 D.C.I.F. 〜ダ・カーポ〜イノセントフィナーレ Sweets 15,856 4月29日 12,685
19 XBOX360 11eyes CrossOver 5pb 13,919 4月2日 10,022
20 DS ひぐらしの哭く頃に 雀 AQインタラクティブ 13,607 11月12日 10,342

基本的には初動率70%くらいで計算して数字出してます。廉価版を除く殆ど全てのコンシュマギャルゲーが、初動率65〜80%で収まっているので、これでもおおむね/だいたいくらいの数字として見るならいけるでしょう。数千本違ってても、数万本違うというのは多分殆ど無いはずだと思います(去年やった時は二個ほど思いっきりずれちゃったけど)。ちなみに「リトバスCE」も多分2万本くらいは売れてるんじゃないかと思いますけど(ファミ通TOP30においては初週ランク外、しかし年末ということもあり下限が32000本の激戦週)、初週の数字すらわからんので除外。
とはいえ今年は「ラブプラス」「シュタインズゲート」という、普通の売り上げではないギャルゲーがあったので、その辺に関してはもうちょい細かくやっています。「シュタインズゲート」は、初週16434本、二週目4253本、三週目6095本と推移したあと、四週目からはランク外(TOP30の下限値は、年末年始や決算期ラッシュなどを除くと、だいたい5000〜3000本くらいが基本)。三週目で売り上げが増したのは、ちょうどネットで評判になり始めたあたりですね。ここから普通のギャルゲーの二週目以降のように半分→半分→半分(たとえば6000本→3000本→1500本→750本)と一気に落ちていくとは考えずらいので、その辺の下降線が緩やかなものだと仮定して計算しています。まーなんつうかVGばりの推測っぷりなので、あくまで大体というか多分の数字ということで(笑)。そのうちまともなの出たら修正します。
ラブプラス」の売り上げ推移は、これだけ長期間に渡り売れ続けているのは、廉価版を除くとおそらく「サクラ大戦」とかあの辺のギャルゲー全盛期以来となるんじゃないでしょうか。(※「サクラ大戦」初週20万のあと、二週目45000、以降23000→12000→8700→8500→8000→5000→7000……と推移、「ラブプラス」初週47000のあと、二週目15000、以降6500→ランク外→6500→ランク外→25000→16000→4000→6000と推移)  とそんなワケで、初動率なんかから推測しようが無いので、その後も5000から緩やかに4000→3000台と下がっていく感じかなぁと推測して数字出してます。これもまた、後にまともな数字が出てきたら修正したいですね。

2009年のコンシューマギャルゲーは「変化の年」だった

さて、2009年のTOP20を見てまず驚くのは、10万本以上の大ヒットが2本、5万本以上のヒットが4本あるということ、そしてそのうち「アイマス」と「メルティブラッド」以外が移植ではない、コンシューマオリジナルというところです(アイマスは大元はアーケード、メルブラは大元がPC、どちらも大元からはかなり変化していますが)。

たとえば2008年のベスト10を見てみましょう。
■2008年

1 PS2 Fate/Unlimted Codes カプコン 107,040
2 DS ひぐらしのなく頃に絆 第一巻・祟 アルケミスト 82,566
3 PS2 アイドルマスターL4U バンダイナムコ 75,272
4 DS サクラ大戦 君あるがため セガ 59,040
5 PS3 ティアーズ・トゥ・ティアラ アクアプラス 55,415
6 PS2 D.C.2 P.S. ダ・カーポ2 プラスシチュエーション 角川書店 55,194
7 PSP CLANNAD プロトタイプ 53,147
8 PS2 キミキス(エビコレ) エンターブレイン 51,283
9 PSP ひぐらしデイブレイク PORTABLE アルケミスト 46,918
10 DS ひぐらしのなく頃に絆 第二巻・想 アルケミスト 44,912

(※2007年以前はこちら(http://d.hatena.ne.jp/Nota/20090116/1232099616)を参照ということで)
このうちコンシューマオリジナルは「サクラ大戦君ある」「キミキス」、そして元もとのアーケードとは全然別物なので最早オリジナルといって差し支えない「アイマスL4U」の3本(うち一本「キミキス」は所謂ベスト版に多少のプラスアルファが為されたものなので、2008年の新作だとは言い切れない)。対し2009年はTOP10圏内に「ラブプラス」「アマガミ」「ときメモ4」「ドリクラ」「シュタゲ」と5本もある、さらに「ラブプラス」「ドリクラ」と続編ではない全くの新作が2本あるというところも、驚異的ではないでしょうか。

2009年のコンシューマギャルゲーは「変化の年」だった。そんなことは「ラブプラス」「シュタゲ」「ドリクラ」「ときメモ4」などのオリジナルタイトルがここ数年のギャルゲーでは殆ど類が無いほどに話題になったという点からも明らかですが、もっと全体的に見ても変化の潮流を感じ取ることが出来るでしょう。
たとえばギャルゲーのタイトル数は、2007年:56タイトル、2008年:58タイトルと推移していましたが、2009年はなんと71タイトルも発売されています(※廉価版、内容と機種は同じでの連作の1・2セットリパッケージ版(たとえば「ひぐらし絆 第一巻・第二巻セット」)などは除く)。単純に発売タイトル数が二割増しに伸びているということですね。
さらに機種別の発売タイトル本数の版図も大きく塗り替えられています。

PS2 PS3 Wii XBOX360 PSP DS
2007 42 0 0 1 9 5
2008 33(-22%) 1 1 2(+100%) 13(+44%) 9(+80%)
2009 18(-46%) 1 0 8(+400%) 34(+160%) 10(+10%)

2007年に比べると、PS2でのギャルゲー発売本数は2008年に約2割減、さらに2009年にはその半分近く減り、2年前の4割ほどのタイトル数になってしまいました。変わって驚異的な伸びを見せているのがXBOX360PSP。前者はそもそもタイトル数が少なすぎるのでパーセントで見ると凄いことになってるんですけど(笑)、それでも「アイマス」一本から2倍・4倍と伸び続けています。頭打ちラインが何タイトルあたりになるのか分かりかねるところですが、少なくとも今年中にはPS2のタイトル数を逆転するのではないでしょうか。そして2009年、タイトル数においては覇権を獲得したPSP(たとえば売り上げにおいても、PS2PSPで同時発売だった『戦極姫』が、PS2版:初週4,775本、PSP版:初週7,704本と、タイトル数はおろか売り上げにおいてもPSPPS2を上回る例もあります)。08年も決して少なくは無かったのですが、そこからさらに3倍近くのタイトルを発売しています。発売予定表を見る限りでは、まだまだ勢いは衰えなさそうです、が、実はPSPは、2009年に発売された34タイトル中24タイトルが「既にPS2など他の機種で発売済みゲームの移植」というもの。売り上げランキングに入ったものでは『To Heart2』や『うたわれるもの』などがそうですね。他に元KIDタイトルが恐ろしいほど沢山発売されてたりします。まあ早い話が、「ほにゃららポータブル」というタイトルが付けられたゲームがめっちゃ多いという話で(2009年で10タイトル)。その点、PSPもギャルゲ全体で見ても、去年よりタイトル数増えたとはいえ、多機種間の移植が多いというのを考えると、数字を額面通りに受け取りすぎるのもあまりよくないかもしれません。
また「PC(主にエロゲ)からの移植」が新作という観点(多機種で既に発売済みのものを除くと、という意味)からすると少し減ったというのも、変化を表しているでしょう。2007年は32タイトル、2008年は30タイトルに対し、2007年は22タイトル。まあ多機種で既に一度は移植されたことのあるPCゲーム(たとえばPSPの『うたわれ』とか『To Heart2』とか)を入れると平年並みになるのですが(2007年:35タイトル、2008年:36タイトル、2009年:37タイトル)、しかし全体の発売タイトル数から換算した割合で読むと、2007年:62%が元PCゲー、2008年:同じく62%、2009年:52%が元PCゲーとなるように、確実に減っていると言えるでしょう。その変化は実際、上記したように、売り上げにおいてもですね。
ここ5年の、「元がPCゲーム(エロゲ・全年齢・同人)」タイトルで、売り上げが3万本以上だったものを列挙してみると、

09 PS2 メルティブラッド アクトレスアゲイン エコール 58,204
09 DS ひぐらしのなく頃に絆 第三巻・螺 アルケミスト 34,725
09 PSP うたわれるもの PORTABLE アクアプラス 33,081
08 DS ひぐらしのなく頃に絆 第一巻・祟 アルケミスト 82,566
08 PS3 ティアーズ・トゥ・ティアラ アクアプラス 55,415
08 PS2 D.C.2 P.S. ダ・カーポ2 プラスシチュエーション 角川書店 55,194
08 PSP CLANNAD プロトタイプ 53,147
08 PSP ひぐらしデイブレイク PORTABLE アルケミスト 46,918
08 DS ひぐらしのなく頃に絆 第二巻・想 アルケミスト 44,912
07 PS2 Fate/stay night[Realta Nua] 角川書店 184,558
07 PS2 ひぐらしのなく頃に祭 アルケミスト 112,859
07 PS2 ひぐらしのなく頃に祭 カケラ遊び アルケミスト 51,666
06 PS2 メルティブラッド アクトカデンツ エコール 124,880
06 PS2 うたわれるもの 〜散りゆく者への子守唄〜 アクアプラス 101,123
06 PS2 CLANNAD -クラナド- インターチャネル 41,722
05 PS2 つよきす 〜Mighty Heart〜 プリンセスソフト 33,233
04 PS2 SHUFFLE! ON THE STAGE 角川書店 35,625
03 PS2 D.C.P.S. 〜ダ・カーポ プラスシチュエーション〜 角川書店 45,431
03 PS2 EVE burst error PLUS ゲームビレッジ 39,719

こう見ると03〜05年のヤバさが際立つ感じなのですが(笑)、逆に08年以降、特に09年の再生産っぷりが際立つ結果でもありますね。つまり、「TYPE-MOONFate)」関係と「ひぐらし」関係か、既にPS2などに移植済みの葉鍵の「PSP移植」という再生産。実際TYPE-MOONひぐらしPSP移植を抜かしたら、07年以降は「ダ・カーポ」と「TTT」しか無いワケでして。
それを考えると、09年の変化は、まずPSPの飛躍という点で非常に「流れに合ってる・正しい」ものであり(勿論売り上げ的な意味でですが)、そして「TYPE-MOON」でも「ひぐらし」でもない、オリジナルタイトルである「ラブプラス」や「ドリクラ」「シュタゲ」が売れる・話題になるという点でも非常に「好感的な変化」と言えるでしょう。つまり「TYPE-MOON」「ひぐらし」に頼らなくてもいい、次の一手を掴み取ったという点において。さらにそれが、移植ではなくオリジナルだということも良い傾向ではないでしょうか。次の「Fate」、次の「ひぐらし」を待つのではなく、コンシューマが自分たちの手でそれ(に相当する売り上げ・話題作)を作り出すということ、そして実際に作り出せたということ。
またコンシューマギャルゲ全体の販売本数も、あくまで推測値ですが、07年が1,003,450本、08年が1,112,993本と来て09年が1,359,983本と非常に上向いています。単純に本数が増えているのですから全体の売り上げが増えるのは当然なのですが、それにしても良い傾向ではないでしょうか。
果たしてこの流れが2010年にどのように繋がっていくのか、現時点ではまだまだ不明ではありますが、しかし数字を見る限りでは、近年では稀なほど、コンシューマギャルゲー(ゲーム内容も市場も)に希望が持てる結果だったのではないでしょうか。