(エロゲで)『選択肢』は、意味を何処かに作り出せる


『選択肢』。ゲーム性や攻略要素という言葉で吸収してしまうには、勿体無いくらい「物語」に寄与していると思います。(たとえ正解がひとつでも)「選択できる」という事実は、「分岐(の可能性)」以上の機能を持っているでしょう。
たとえ本筋とは関係ないような選択肢ですら何故あるのか――いや、それが「どういう効果をもたらすか」でいえば、プレイヤー自身の手で選択したように思える”重み”を与えられるというところでしょう。
昨日(http://d.hatena.ne.jp/Nota/20080722/1216728189)書いたように、『意味』とは常に、他の何かしら(あるいはその何かしらの「意味」)によって揺れ動いていきます。ありとあらゆる場面の『意味』も、他の場面や他の要素の存在から、常に干渉を受け変動を続けているのです。
一昔前に流行った、いわゆる泣きゲーのテンプレートみたいな構成――前半はギャグ有りのラブコメだけど、後半(個別シナリオ後)は重い展開――なんかは、分かりやすい喩えでしょう。後半部の重い展開があるお陰で、前半部の明るいラブコメパートの意味が変わってくる。前半部の意味に、日常の儚さや人の心の恒久性の無さという意味を、この後半部が顕にしている。全部が明るいラブコメだったら、それは生じないでしょう。これは大きな分節で見た際の意味作用ですが、小さな文節間でも、そういった作用は生じます。


そういった意味作用を、あくまでも自分が『選択した』形で提示できる――つまり、自分の選択が意味を作っている(ように錯覚できる)というのが、選択肢の持つ大きな力ではないでしょうか。
自分の選択が場面を作り、それが「別の場面」あるいは「全体」の意味に対し作用する。厳密に言えば、場面や反応が変わる以上、どれだけ意味の無いような(ちょっとセリフが変わる程度の)選択肢でも、そういった効果を持つでしょう。
この、自分で意味を作り出すという能動性が、「自ら物語を作り出す」ということに迂遠に繋がり、それが、いわゆる主人公への同一視・同一性を高め(そして逆に、それ自体が「自ら物語を作り出す」という要素を高め)、それにより物語に対し影響を与えているとは考えられます。(つづく、かも。)